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Once upon a time (仮)

  • 2008/07/15(火) 23:19:15



リハビリ作品。単発ファンタジー話です。続くの、か?(ぉぃ
シリーズ物になる可能性はあります。


仮タイトル Once upon a time 

女好きな王様と意地っ張りな王妃様のお話。


続きからどーぞ



***







極力、息を殺しながら部屋に入る。本来ならばジェラール自身の自室に入ればいいのだが、彼が妻―アドリアーナと結婚して以来その部屋は第二の執務室へと変貌を遂げた。
そのまま寝床に入りたいが、泥をつけたまま彼女の隣で寝れば翌朝は悲鳴で起きる事になるだろう。上着を適当に椅子の上に置くと、湯浴みをする前に一旦椅子に座る。

「ジェラール様?」

突然暗闇に響いた声はジェラールがよく知るものだった。暗闇の中で姿は見えないというのに、その声は酷く魅力的で心地よい。

「………なんだ、起きていたのか?寝ている事を祈っていたんだがな」
「物音に起きましたの」

ベッドから起き上がる音がすると月明かりに照らされた人影がジェラールの傍に寄る。
暖かな土色の髪は光に当たるときらきらと光る不思議な色をしている、同色の睫に縁取られた瞳は透き通る宝石のように美しい青だ。

アドリアーナは元はこの国―ミッドガルドの出身ではなく隣国―アールヴヘイムの王女だった。親交の証、と先代の王たちによって婚姻が結ばれた、いわゆる政略結婚でこの国にやってきた。
日に当たればすぐに赤くなる白い肌は、浅黒いジェラールのそれとはまるで違う、初めて触れた時は消えてしまわないか思わず確かめてしまった。

「こんな遅くにお帰りになられなくとも……明日の朝に帰ればよかったでしょうに」

そう言いながらアドリアーナの細い指がジェラールのシャツのボタンに触れる。

「何をしている?」
「着替えるんじゃありませんの?こんな時間に侍女をお呼びになっては可哀想ですもの」
「着替えくらい自分でできる―それとも」

細い腰を抱き寄せると、その唇を優しく奪う。
驚いたようにアドリアーナは一瞬震えたが、すぐに力を抜いてジェラールのシャツにしがみ付く。

「誘っているのか?」
「馬鹿な事をおっしゃらないで!……帰ってきたのでしたら明日から執務がございましょう。湯浴みをなさってお休みくださいませ!」
「そう言うお前も私に抱きしめられて汚れたな―湯浴みに付き合え」
「ジェラール様!おふざけも大概に」
「私が、ふざけているとでも?」

か細い体に儚い存在感ゆえに最初は皆アドリアーナに対しておとしやかな印象を抱く。
だがそれは現実とはまったく違う。
言いたい事ははっきり言うし、言葉遣いでなんとかつくろっているものの、中身はたいそうおこちゃまだ、とジェラールは思っている。
現にちょっとでも動揺させればすぐにあせりだし、感情を高ぶらせる。

「何もしないさ、お前を汚したのは事実だからな。泥は払いのけて寝たほうがいいだろう」
「ジェラール様の次に入ります」
「私は時間の無駄が嫌いだ」
「ジェラール様!」
「様はいらない、と何年間も言っている」
「いやです!お放しくださいませ!」
「しー。大声をだせば人が起きてくるぞ?夫婦仲が良い事に誰も咎めはしない。まぁ、お前が一番ダメージを受けるだけだろうな」
「夫婦仲が良いだなんて、娼館帰りの旦那様に言われたくないですわ!」
「娼館には行っていない」
「まぁ、北の娼婦でなければどこですの?南の魔女?西の姫君?東の、」
「少し黙れ」

別に格段怒っていたわけではないが、これ以上エスカレートされても困るので語尾を強めて言うと、アドリアーナの瞳が揺れた。

「妻の誕生日前日に必死に戻ってきた夫に対する労いはないのか?」
「……こういう時だけ、戻ってくるのは、ずるいですわ」
「お前にこれ以上嫌われたくないからな」

そう言うとアドリアーナは俯いて、ジェラールの胸に顔を押し付ける。

「おかえり、なさいませ」
「ああ、ただいま」

なるべく自然に妻の手をとるとジェラールは彼女を誘う。
未だに迷ったようにアドリアーナの瞳は揺れている。
未だ少女のような瞳を持つ妻にジェラールは優しく微笑んだ。

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